01/09/2026
前田昌輝 個展
「種 / SEED」
会期 2026.9.12 sat – 9.20 sun
作家在廊 9.12,13,14,18,19,20
会場 Gallery Kuga
前田昌輝さんと初めてお目にかかったのは、2024年9月のことでした。
「タジェール・デ・マエダ」として出展されていた作品には、日々の暮らしで気軽に使える木の皿やボウルが並んでいました。
その中で、ひときわ目を引く、不思議な形のオブジェがありました。
「これは何ですか?」
そう尋ねると、前田さんはそれを worry wood と呼んでいると教えてくださいました。
きっかけとなったのは、アイルランドでお土産に買った worry stone(ウォーリーストーン)。
小さな大理石の円盤に、親指がすっと収まるくぼみがあり、イライラしたときや心が落ち着かないときに、そこを親指で撫でる。そうすると、少し気持ちが静まっていく。
「これを木でつくったら、もっと心地よいに違いない。」
前田さんはそう考えたそうです。
手のひらで包み込む。
撫でる。
触れる。
言葉にするほどではない、ちょっとした不安やモヤモヤを、ただ木に触れることでほどいていく。
そして何より、木という素材そのものを、いちばん直接的に感じることができる。
普段はひっそりと佇みながら、手に取ったときにはじめて、その存在が立ち上がってくる。
そんな「触って楽しむ木のオブジェ」があることに、私はとても惹かれました。
そして翌年、多治見の工房を訪ねました。
さまざまな作品を見ながらお話を伺う時間も楽しかったのですが、何より印象に残ったのが、木材を保管している大きな工房です。
旋盤を使う小さな制作空間とは別に設けられたその場所は、まるで体育館のように広い。
横開きの扉を開けた瞬間、ふっと木の香りが立ち上がりました。
なんとも言い難い、深く豊かな木の芳香。
一瞬にして、森の中に入り込んだような感覚になりました。
そこに積まれた木を眺めながら、前田さんは日々、木と向き合い、考え、試し、そして木から何かを引き出しているのだろうと思いました。
木を「素材」として扱うだけではなく、
木そのものと対話する。
今回、前田さんが「タジェール・デ・マエダ」ではなく、前田昌輝として木と向き合ってきた時間と、その成果を、初めてひとつの展覧会としてご覧いただきます。
暮らしの道具から、オブジェへ。
触れることから、考えることへ。
木という素材の、その先にあるもの。
ぜひ実物を見て、手に触れて、感じていただきたい展覧会です。
皆さまのご来廊を、心よりお待ちしております。